当時のマスコミによる追悼記事
このサイトではキューブリック監督の情報を扱っていますが、基本理念のひとつが「追悼」の下に情報を構成しているため、必要以上に故人を崇拝する雰囲気なのがどうしても否めません。
そこで第三者の客観的な視点から“映画監督キューブリックの死亡”を伝えたものはないかと考えた結果、マスコミの記事が相応しいという結論に辿りつきました。
キューブリック監督の死が当時の世間一般にどのように捉えられたかを知る手がかりになれば、私が著作権料を支払ってここに掲載した甲斐があります。
このページで、参考元が特定の1社に限られるのは、直接交渉した中で、著作権料が最も安く、先方の対応が最も良かったからです。
読売新聞1999年(平成 11 年)3月8日(月曜日)夕刊15頁4版
2001 年宇宙の旅・時計じかけのオレンジ ──キューブリック監督死去
【ロンドン7日=芝田裕一】SF映画「2001年宇宙の旅」「博士の異常な愛情」など、映画史上に残る数々の傑作を世に送り出した現代映画界の巨匠、スタンリー・キューブリック監督が七日朝(現地時間)、ロンドン北部セントオールバンズ郊外の自宅で死去した。死因は明らかにされていない。七十歳だった。
ニューヨーク市ブロンクス生まれ。十三歳の時に医師の父親にもらった古カメラに熱中し、その後、写真誌「ルック」のカメラマンとして働き、レンズ越しの視覚を磨いた。二十代で映画の世界に傾倒し、アクション映画「現金に体を張れ」(一九五六年)を脚本・監督して高い評価を受け、「スパルタカス」(六〇年)で米アカデミー賞四部門を受賞、脚光を浴びた。
ハリウッドの米映画界とのしがらみを嫌って英国に移住後、映画人としての黄金期を迎えた。
以後、軍人の妄執が米ソ核戦争の引き金を引くことで、冷戦時代を戯画化した「博士の異常な愛情」(六三年)、コンピューターが知性と感情を併せ持つようになる近未来を描いた「2001年宇宙の旅」(六八年)、暴力に明け暮れた青年を洗脳する刑務所の世界を描いた「時計じかけのオレンジ」(七一年)の三本を自らプロデュース、演出し、その独特の映像・音楽表現により、映画界の「鬼才」としての地位を不動のものとした。
その後もホラー作品の「シャイニング」(八〇年)、ベトナム戦争に焦点を当てた「フルメタル・ジャケット」(八七年)と、一作ごとに異なるテーマに挑戦した。
映画製作においては、一切の妥協を許さぬ完全主義者として有名。また、マスコミのインタビューを断り、映画界の知人との交友も避ける、一種の“世捨て人”としても知られた。
四十五年近いキャリアで全十三作、特に過去三十年間で、わずかに五作と寡作だった。原作にない独自の映像表現を追求したため、SF小説の巨匠、アーサー・クラーク氏や、スティーブン・キング氏ら原作者との対立を招くことも少なくなかった。遺作となるトム・クルーズ主演の「アイズ・ワイド・シャット」が完成したばかり。全米で七月、日本で八月公開の予定。
映画評論家・双葉十三郎さんの話「ハリウッドの流れに乗らず、常に鋭い演出でハードなタッチの作品を発表してきた。『2001年宇宙の旅』ばかりでなく、『博士の異常な愛情』『時計じかけのオレンジ』などのような作品も、社会的な視点から皮肉をこめて辛らつに描いた。映像表現の面においても新しい技術を積極的に導入し、映画史に残る先駆的役割を果たした」
" 映画を超えるものを作った " ──スピルバーグ氏
【ロサンゼルス支局7日】映画界の巨匠スタンリー・キューブリック氏(70)の死は、世界の映画関係者に衝撃と悲しみをもたらした。
スティーブン・スピルバーグ監督はロイター通信に対し、「彼は単なる映画を超えるものを作った」と語り、「我々が皆、彼のまねをしようともがいていたのに、彼はだれのまねもしなかった」と、キューブリック氏の独創性を称賛した。
「時計じかけのオレンジ」で主演したマルコム・マクダウェルさんは、AFP通信に対し「彼は偉大な映画監督だった。深い悲しみに包まれている」と語った。また、遺作となる「アイズ・ワイド・シャット」で主演したトム・クルーズ、ニコール・キッドマン夫妻は「私たちにとって家族のような人だった。ショックでどうしようもない」との声明を出した。
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補足事項
- 記事は全8段の構成。映画「2001年宇宙の旅」の写真と、キューブリック氏の顔写真が1点ずつ、合計2点掲載されています。
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関連リンク
- 追悼記事
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